HOME
ボクの某国論
其の三十二 某国崩壊論が崩壊?の巻    
 某国の経済は今にも崩壊するだろうと言う某国崩壊論は、ここ何年も言われ続けて一向に陽の目?を見ない・・・推論だけはたくさん出てきたが一向に「論の域」を出ないので 今度は崩壊論そのものが崩壊したのではと言う論争に発展した。某国崩壊論の共通点は、まず経済が崩壊して共産政権が瓦解するというシナリオの部分で 日本だけでなく諸外国の経済学者や投資家の多くが唱え続けてきたが、特に某国出身の経済専門家や評論家が、いよいよ某国経済は崩壊して政権まで危うくなるという言を発すると、日本のマスコミは、喜んで食いついた。某国台頭を恐れる我が国の国民の多くが、対岸の火事の如くこれからどうなるのかと興味深々で本や雑誌に飛びつき その手の本も良く売れたのである。

某国出身の経済学者や政治学者が崩壊論を唱えると、日本人と違い色眼鏡なしで自国を評価していると思えるので逆に客観的に感じ、興味深く聞くことができる。私自身も長きにわたる某国生活の中で バブル経済の崩壊を時間の問題として見てきたし、今でも危ないとは思っている。故にこうした経済崩壊論が非現実的だとは決して思っていない。しかし予想したバブル崩壊が起きないまま十数年が経過してしまったのも事実である。最近は、某国出身の評論家まで予想を外し続けた反省記事を書くようになっている。それだけ某国の経済の先行きについては、予想が難しく 西洋の経済理論や旧ソ連で起きた歴史に照らし合わせるだけでは、予想通りの展開にならない事だけは確かなようである。つい最近では、トランプ就任後のアメリカ経済についても多くの専門家が予想を外しているので 常識や従来の経験だけでは測れない何かの要素が存在するのである。特にヒトラーやトランプのように ある意味カリスマ的で、しかも大衆のの不満を吸い上げ急激に伸し上がってきた人物は、次に何をするのか展開の予想さえ難しい。(本人も判っていないのかもしれない)某国も共産主義独裁政権でありながら資本主義を導入した初めての国だ、過去の事例もないので展開の予想は簡単ではないのかもしれない。

 また某国論のどこかでも書いたが、某国政府の優秀な経済担当者達が、旧ソ連の崩壊や日本のバブル崩壊、アジア通貨危機などを研究し尽くし対策を打ってきたことは、経済崩壊を食い止めている事と大いに関係があるだろう。特に西側諸国などと全く異なるのは、共産党政府がマクロ経済だけでなくミクロ経済にも強く関与してコントロールを行っている所だ。但し、このコントロール自体が、某国経済のこの先の発展を阻害している最大の要因でもあるのだが・・。

 経済崩壊論の主柱となってきたのが、不動産バブルの崩壊が発端で金融システムの破綻に移行するという展開論、もしくは不動産開発投資につぎ込まれた所謂シャドーバンキング等の融資の焦げ付きから一気に崩壊の危機が訪れるというシナリオである。従来 5か年計画で数値目標を指していた党が今回数値目標を出さないという計画経済では目面しい展開になったが GDPの成長目標を一旦捨て 不動産など危ない部分を抑制したいという近平君の強い意志が見られる。

 近平君は、党大会で「住宅は、住むためのものであり 投資の目的であってはならない」と今更ながらもっともらしい事を強調した。すでに放置できない所まで来たのであろう、よって当面住宅購入規制を緩和する気配は無いようだ。住宅も含めた建築バブルで高い経済成長を何とか保ってきた共産党政権にしてみれば「もろ刃の剣」ともいえる危ない施策である。でも今やらねばもっとひどいことになるから仕方がないのだ。

一時はGDPの4割を支えてきたと言われる不動産バブル、これを規制したら、さぁこれから経済のどこに力を入れて行くの?となる。主力の貿易も人件費の高騰で“製品の高かろう悪かろう化”が進み 東南アジアにシフトし始めた、某国政府は、国有企業が作る鉄鋼製品などを安く販売してきたが、大幅な貿易赤字にも温和だった米国も小浜君が去った後、今ではトラちゃんが牙をむいて吠えはじめ 決してこれからの環境は良くない。しかも委託生産型の外資企業の撤退は、確実に進んでおりこれもボディブローのように効いてくるのである。

国のGDPが前年比6.7%増らしい、本当かどうか知らないが、庶民の生活とはほとんど縁のない数字である。例えば私の住んでいるT市は、GDPの伸び率が某国トップで 一人あたりのGDPは、すでに上海市のそれを抜いている。ところが、街は、ほとんど活性化しておらず。庶民の懐は厳しいままだ。ショッピングモールも儲かっているのは、23箇所だけ GDPの65%を占める工業地区にある日系の百貨店は、客が来ずに今にも潰れそうな状況にある。立派なビルだけはどんどん増えるが 空室ばかりである。実体経済は、脆弱に見えて仕方がない。

ある銀行のT市支店長は、「毎年支店のノルマは、都市のGDPに応じてかけられるのですが、それでは実態とかけ離れた高いノルマになり 困り果てている」と言っていた。経済動向に敏感な金融機関でさえ、そう感じてるのだ。GDPが如何に参考にならないかお分かりだろう。

このように指標なってきたGDPは参考とならず、経済については、あまり明るい材料が無い。バブル崩壊が発生しなくとも とてもすぐにはアメリカを抜くような消費大国にはならない気がする。普段間近に一般庶民の生活を見ていても 消費が今の23倍と増えていくとはとても思えないのである。

 自動車業界では、某国の保有車両数が現在の5倍まで膨れると見て大型工場を作ってきたが、最近では見方が少しずつ変化しているように見える。某国では2×23だったり=1にしかならない事が、これから起きるかもしれないのだ。だいたい 基数になる”2”だ”3”だ・・自体が怪しいし。

 2017年のGDPが大きな落ち込みもなく推移しているのは、片や製造業の落ち込みをサービス業がカバーし始めているからで アリババやテンセントなどネット企業の事業躍進は目を見張るものがある。しかし 世の中、ネット化・・ロボット化・・AI化などなど効率化を求めるだけでは、店舗も店員のいらなくなり失業者が増えるので 人が収入を得られる何らかの仕事が無くてはならない。そうしないとお金も動いていかない。製造業がすっぽり抜けてくれば 今のアメリカのように産業の空洞化が進んで世の中が荒みトランプ政権が生まれるような事になってしまう。トラちゃんは、まさに製造業を取り戻すために動いているのだ。

 某国も製造業衰退が進んでおり これが加速すれば危ない、まさに正念場なのである。イノベーションと技術が売りの新製品が次々と生まれてくれば未来があるが そうでなければ「他国に売れるのは、原材料と安い労働力」と言う元の姿の戻ってしまうのである。そこで打ち出された一帯一路政策は、経済の崩壊を食い止め余剰の設備と労働力を送り出すシルクロードでもあるのだが、要らないものをどんどん作って経済を回す癖は抜けておらず 国内と同じく無機質なインフラの押売りに関連国の評判は必ずしも良くない。でも これに失敗すれば 崩壊論は現実味を帯びるのかもしれない。(2017年12月記)